原産地

原産地は中国の南西部といわれています。

日本、長崎県への伝来

日本のびわに関する最古の記録は天平宝字6年(762年)の正倉院文書です。また、大阪府止々呂美村(現箕面市)の『止々呂美村誌』(昭和6年)には、南北朝時代には栽培されていたという記述があり、これが栽培に関する最古の記録です。江戸時代になると千葉県、和歌山県、兵庫県、愛媛県、九州各県などで栽培の記録が残っています。
産業としてのびわ栽培が始まったのは、江戸時代末期に長崎で誕生した「茂木」が普及し始めた明治以降です。「茂木」は、天保・弘化の頃(1830~1847年)、長崎で女中奉公していた長崎市北浦町出身の三浦シオ(戸籍上の本名は「ワシ」)が、中国人通訳から唐びわを譲り受け、その種子を生家に播いて誕生したものです。

主要産地の推移

明治9年の「各区農産表」によると、びわは、このころにはすでに西彼杵郡、北松浦郡など県下の広い地域で小規模ながら生産されていました。明治30年頃、茂木村(現:長崎市茂木町)の梅木寅次郎が15aを開いて「茂木」を植え付けました。これが産業としてのびわ栽培の始まりとされ、また、この頃から「茂木びわ」と呼ばれるようになったようです。その後、茂木を中心とする橘湾沿岸に、「茂木」の産地化が進んでいきました。
橘湾沿岸に順調に普及、拡大していたびわ栽培に大きなチャンスが訪れたのは大正3年のことでした。この年、東京大正博覧会に長崎の「茂木びわ」が12点出品され、全点入賞したことをきっかけに、その名が全国に広く知られるようになったのです。

機能性

びわ果肉の橙色はカロテノイドによるもので、カロテノイド含量は果樹類の中で最も高いグループに属します。中でも、がん予防効果や糖尿病、動脈硬化などのリスクを下げるといわれているβ-クリプトキサンチンは、ウンシュウミカン並みに多く含まれています。また、整腸作用や血糖上昇抑制作用があるといわれる食物繊維も比較的多く含んでいます。

品種と主要品種構成

びわは品種の変遷はほとんどなく、江戸時代末期に誕生した「茂木」が現在でも主力品種です。「茂木」は明治30年頃から普及し始め、その優秀性から在来種はやがてほとんど消えてなくなり、長崎県のびわと言えば「茂木」という状況になりました。
昭和51年に長崎県果樹試験場で育成された「長崎早生」は、早生種で寒害を受けやすいため露地栽培では適地が限られましたが、施設栽培用として昭和57年頃から植栽され、現在では施設栽培における主力品種となっており、全国的にも「茂木」に次いで栽培面積第2位を誇っています。昭和57年に同試験場で育成された「白茂木」は一旦普及しましたが、その後減少しました。また、長崎県には千葉県の「田中」のような大果品種がなかったことから、既存品種の中から大果系の「福原早生」を平成2年に選抜し、施設用品種として導入しました。現在、『長崎甘果』の名称で販売されています。長崎県果樹試験場(現:農林技術開発センター果樹研究部門)で、「涼風」、「陽玉」、「麗月」、「涼峰」および「なつたより」を育成しました。その中でも平成21年に品種登録された「なつたより」については市場の評価も高く、「茂木」に替わる新しい長崎びわとして普及が始まっており、県内第3位の品種となりました。

栽培と収穫の様子

長崎県の品種

①長崎早生(茂木×本田早生)
熟期は育成地の長崎県大村市で5月下旬頃、果形は長卵形~長楕円形、果皮色は橙黄色で、果実重は40~50gとなり、「茂木」より若干大きいです。糖度は12%程度で「茂木」より若干高く、他の品種にはない香味があります。果肉は柔軟、肉質は緻密で食味は良好です。「茂木」に次いで全国第2位の品種です。

②涼峰(楠×茂木)
熟期は育成地の長崎県大村市で5月中下旬、果形は短卵形で果皮および果肉は橙黄色です。果実重は55g程度であり「長崎早生」や「茂木」と比べ明らかに大果です。糖度および酸含量は「長崎早生」や「茂木」と同程度で、果肉は軟らかく多汁で食味は優れています。

③麗月(森尾早生×広東)
育成地の長崎県大村市におい
て早生一般型ハウス栽培体系
で栽培した場合の熟期は4月下
旬で、果形は円形から扁円形、
果皮色は黄白色の白びわです。果実重は50g前後で、「長崎早生」や「茂木」よりも大きいです。果皮は比較的厚いが、剥皮性は良好です。果肉は黄白色を呈し、緻密で軟らかく、糖度は平均14%前後と高いので食味が非常に優れています。

④なつたより(長崎早生×福原早生)
熟期は育成地の長崎県大村市
で5月下旬、果形は短卵形で果
皮および果肉は橙黄色です。果
実重は60g以上で「茂木」より
も大果です。果肉は比較的軟らかく、「茂木」に比べて酸含量は同程度ですが糖度が高く、食味は良好です。果皮は橙黄色ですが「茂木」よりも橙色がやや薄いので、収穫適期を逃さないように注意しています。

⑤涼風(楠×茂木)
熟期は育成地の長崎県大村市
で5月下旬~6月上旬、果形は
短卵形~短楕円形、果皮色は
橙黄色で、果実重は55gとな
り、「茂木」よりも大きいです。糖度は「茂木」よりも高く、酸含量も「茂木」よりやや高めです。果肉硬度は中程度、果汁の量は多く、食味は「茂木」と同等以上です。

⑥茂木
左記参照

⑦陽玉(茂木×森本)
熟期は育成地の長崎県大村市
で6月上旬、果形は短卵形、果
皮色は橙黄色で、果実重は60g
前後となり、「茂木」よりも大きいです。糖度は「茂木」と同程度かやや劣りますが、糖酸のバランスが良く、食味は「茂木」と同程度かやや優れています。

⑧白茂木(茂木実生)
熟期は育成地の長崎県大村市
で6月中旬から下旬で、果形は
卵形、果皮色は黄白色で、果実
重は約50gとなり、「茂木」より若干大きいです。糖度は13%程度で「茂木」より1~2%高く、果肉は緻密で軟らかく、食味は良好です。

※参考文献
・「長崎県農林産物の伝来と歩み」平成25年3月
 長崎県農林技術開発センター

※取材協力:長崎県農林技術開発センター

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