あじの体の両側にはぜんご(ぜいご)とよばれる硬いうろこがありますが、これは動物学上楯うろこといい、うろこの変形したものです。
プランクトンをエサにしていて、プランクトンを追って日本近海を春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下します。
あじは一般に暖海性のため北海道ではほとんど獲れません。また外洋性の水を好むため瀬戸内海その他内湾地域には少なく、おもに関東以南の千葉県、神奈川県、山口県、長崎県などで漁獲されます。
あじは漁獲量が多いので、価格がリーズナブルであり、味も良いので人気があります。周年出回っていますが、一般には小あじは5~7月、大あじは秋といわれています。あじは晩夏から秋にかけてが産卵期なので、その前の夏に脂がのり、この時期のものがおいしいという説が一般的です。
あじの良質なタンパク質にはアミノ酸が豊富に含まれ、疲労回復や肝機能・免疫力向上などの効果があります。なかでも、血圧やコレステロール値を下げるタウリンが多く含まれています。さらに、同じく血圧を下げる作用があるカリウムも豊富です。
そのほかにも、多くの栄養素の代謝を促すビタミンB群に加え、血液をサラサラにして血栓を防ぐEPAや、脳細胞を活性化するDHAなどの不飽和脂肪酸も含まれているため、動脈硬化や高血圧など生活習慣病の予防や、老化防止などの効果が期待できます。
青皮のあじは、いわしやさんまなどの青皮の魚と比べて脂質含有量がやや少なく、クセはありません。あじの脂質含有量は産卵期前の夏でも100g中に10g程度で、秋のさんまの20gに比べれば、非常に少ないです。ただし、味の決め手となるイノシン酸の量が多いので、おいしい魚といえます。
あじの組織中にはコラーゲンが少ないので、煮ると身崩れしやすく、塩焼きにしても身離れが悪いです。コラーゲンが組織と組織の間をしっかりと結合していないので、加熱によってコラーゲン以外のタンパク質がくっついてしまうからです。
むろあじ〔室鯵〕
伊豆七島より九州南端にかけて分布する魚で背部は青緑色、腹部は銀白色を呈し、40cmに達します。主として、くさやの原料とされます。
まるあじ〔丸鯵〕
南日本の沖合におり体長30cmに達します。塩焼きにするとおいしいといわれています。
しまあじ〔縞鯵〕
南日本に多く、体長は70cmぐらいになります。背部は青色、腹部は銀白色、体の中央に黄色の帯が走っています。あじ類のうちもっとも美味とされ、刺身、塩焼きで食べられます。
野母(のも)んあじ
「野母んあじ」は、漁師の技と魚への愛情が生み出したこだわりの高級ブランド魚です。地元の漁師が熟練の技で、一尾一尾大切に釣り上げた、野母崎沿岸の瀬付きのあじで全長26cm以上、重さが300~500gのものの中からさらに厳選したものです。魚体は肉厚で脂がのっています。旬は初夏(5月ごろ)で、最盛期は秋頃です。刺身、焼き魚、寿司などどんな料理でも美味しくいただけます。
ごんあじ
長崎の五島灘に生息する瀬付きのあじで、250gより大きいサイズを「ごんあじ」、それ以下を「若ごんあじ」といいます。五島灘の「ご」と腹部が黄金色に輝いていることから「ごんあじ」と名付けられました。漁獲後に海上生簀(いけす)で1週間程度餌を与えずに活かすことで、自分の体に蓄えていた脂を使おうとして身全体に平均して脂がのるため「霜降り」の状態になり、口に入れたとたん脂がじんわりしみ出ておいしさが広がります。
旬(とき)あじ
天然あじ の水揚げ高日本一を誇る松浦市は4~8月にかけ対馬
海峡から五島灘海域を舞台に、日本遠洋旋網漁業協同組合の所属船団があじを漁獲します。その中でも100g以上のものを「旬あじ」と名づけ、ブランド化しています。その味わい深さはもちろん、「旬あじ」の身は必須アミノ酸をバランスよく含んだ低脂肪で良質のたんぱく質を持ち、生活習慣病の予防にも効果的とされるEPAを多く含んでいるヘルシーな魚です。