原産地

南アメリカのアンデス山脈高原地帯(ペルー、エクアドル)

日本・長崎県への伝来と
産地の推移

日本への渡来は、17世紀中期頃に蘭人(オランダ人)が、長崎の出島に種子を持ち込んだのが始まりだといわれており、幕末までは食用としては普及せず、「観賞用」としての利用が主体でした。
その後、明治初年に東京の勧業寮(現新宿御苑)で「野菜」として再輸入されましたが昭和初期までの生産はわずかでした。
長崎県への「野菜」としての導入時期は明らかではありませんが、明治31年創立の農事試験場(長崎市中川)で、明治33年に品種比較試験が行われていることから、それ以前から栽培されていたものと考えられます。
また、これとは別に、明治20年に大村市竹松協会のド・ロ神父が、本国フランスから種子を持ち込み、教会周辺の移住者用の畑で観賞用を兼ねて栽培し、長崎の大浦天主堂の宣教師の接待用に用いたといわれています。当時、大村では「西洋ナス」「畑柿」と呼ばれており、無支柱・無摘心の放任的栽培であり、果実直径4~5cm、大きいもので5~6cmの小果でした。
明治年代には、販売用としての栽培は見られず、大正2年になって初めて統計に現れていますが、数年は増加せず大正6年頃から徐々に増加し、昭和4年を境に急上昇しています。
長崎県において、トマト栽培が本格化した時期は、1955年(昭和30年)頃からであり、ビニル被覆利用による早出し技術の導入や新品種の発表等により、それまでの露地栽培からトンネル・ハウス栽培への転換が図られ、県下各地で栽培が行われました。

名前の由来

トマトという名は、15世紀に栄えたメキシコ中央部のアステカ王国の人々が「膨らむ果実」と読んだ「tomat(lトマトゥル)」に由来します。消費量の多いイタリアでは、ポモドロ(pomodoro、黄金のリンゴ)、フランスではポーモダモーレ(pomme d' amour、愛のリンゴ)、イギリスではラブアップル(love apple、愛のリンゴ)、ドイツではパラディースアプフェル(Paradeisapfel、天国のリンゴ)等の愛称があります。
また、トマトの学名「Solanum」はラテン語の‘安静、慰め’を意味するsolamenに由来し、「リコペルシコン」は‘狼の桃’という意味です。



近年カラフルなトマトが増えており、色による分類ではピンク系、赤系、緑系に大別され、ピンク系トマトが生食用、赤系トマトは加工用として使用されています。日本ではピンク系が一般的ですが、海外のトマトは赤系トマトが主流です。赤系トマトには抗酸化作用が期待されるリコペンが豊富に含まれているため、青果用のほかクッキングトマトとしての利用やリコペン含量の高い新品種の育成においても注目されています。

機能性

・リコペン
カロテノイドの一種で、トマトやスイカ、グレープフルーツなどに含まれる脂溶性の自然に存在する赤色の色素で、リコピンとも呼ばれます。カロテノイドは、緑黄色野菜に多く含まれ現在600種類以上が知られており、活性酸素を消す抗酸化力があるのが特徴です。代表的なものとして、リコペン、αカロテンやβカロテン、ルティンなどがあります。その中でもリコペンは抗酸化力が強いのが特徴で、βカロテンの2倍、ビタミンEの100倍の抗酸化力を持つといわれています。人間はカロテノイドを生合成できないため、経口摂取する必要があります。脂溶性のため生のトマトを単独で食べるより、サラダにしてドレッシングをかけたり調理した方が吸収率が良くなります。1日あたりの摂取量の目安は15~20mg程度とされており、大きめのトマト1個(200~250g)のリコペン含有量は7~8mg程度なので大玉トマト2個で約15mg、トマトジュースは150ccで15mg程度のリコペンが摂取できます。
・カリウム
トマトには、血液中の塩分を排出し高血圧予防に効果的なカリウムが豊富に含まれているため、カリウム/ナトリウムバランスが改善され、血圧を降下させる効果があります。
・ビタミンC
ビタミンC(アスコルビン酸)は、コラーゲン合成の補酵素として働き、皮膚や粘膜の健康を維持するために必要な水溶性ビタミンの1つです。抗酸化作用があり、還元作用によりメラニン色素の生成を抑制する働きも知られています。また、一般にビタミンCは熱に弱いが、トマトのビタミンCは熱にも強いといわれています。

この他、脂肪代謝を円滑にするビタミンB6、水溶性食物繊維のペクチンが含まれ、便秘改善、老廃物や有害物質を排出する働きを促進し、生活習慣病の予防に効果的だといわれています。







※参考文献
・「長崎県農林産物の伝来と歩み」平成25年3月
 長崎県農林技術開発センター

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