いわしというと一般にまいわしをさします。体の両側に黒い点が7つぐらい並んでいるところから、東北地方では“ナナツボシ”とも呼ばれています。また大きさにより呼び方を変える場合もあり、3cmぐらいの子魚を“しらす”、10cmぐらいのものを“小羽(こば)いわし”、13cm前後のものを“中羽(ちゅうば)いわし”、18cmぐらいの大きなものを”大羽(おおば)いわし”といいます。このうち、“小羽いわし”は1年魚、“中羽いわし”は2年魚、“大羽いわし”は3年以上たっているとされています。いわしは、水のきれいな外海の表層近くにすむ魚で、15~20℃の水温を好み、いつも群をつくっています。しかし2~3年たって成魚となったものは産卵期(2~3月)になると岸に近づき、内湾にも入りこんできます。
日本各地の沿岸、オホーツク海、沿海州、東シナ海に分布しています。海洋の表層から中層にすみ、内湾、外洋を問わず生息しています。主食の植物性および動物性プランクトンを、エラにあるさい把という器官で捕食します。食事はもっぱら昼間に行い、夜は休みます。産卵期は12月から6月で地域により異なります。孵化した仔魚の全長は3mm程度で、20cmほどの成魚になるには約7年かかります。メスは産卵すると死にます。
いわしは時期により脂の含量に差がありますが、これは季節により体の栄養状態が違うためです。いわしに限らず魚の体には組織脂肪と貯蔵脂肪という二種類の脂が貯えられていますが、このうち組織脂肪は栄養状態のいかんによって変わらず、たえず細胞内に貯えられている脂をいいます。一方、貯蔵脂肪のほうは栄養状態しだいでいちじるしく増減し、いわしの場合には、皮下と腹腔中に貯えられています。北海道と山陰沖でとれるいわしの脂肪量を比べてみると、北海道産のものの方が多くの脂肪を含みますが、これはいわしの系統が異なるためといわれています。
いわしには骨や歯の生成に欠かせないカルシウムや、その吸収を助けるビタミンDが豊富に含まれています。また、小骨にも骨や歯を丈夫にするリンが含まれているので、丸ごと食べるのが一番です。
また、不飽和脂肪酸のDHAやEPA、抗酸化作用のあるビタミンAを多く含むため、血液をサラサラにして細胞の老化を防ぎ、動脈硬化や心臓病などを予防する効果があります。そのほか、貧血予防に有効な鉄や、代謝を促進し、肝機能を強化する作用があるタウリンも含んでいます。