原産地

中央アジアのアフガニスタンの麓地帯

名前の由来

中国では胡の国から伝わっただいこんという意味の「胡羅葡(フロボ)」とよばれています。中国から渡来したにんじんは、日本で古くから知られていた薬用にんじんと根の形が似ていたので、それと区別して芹にんじんとよばれました。せりと同じような葉をしていたからです。それが食用として広く利用されるようになり、いつしか「芹」がとれてにんじんとなりました。

日本、長崎県への伝来

にんじんは、来歴によって東洋系にんじんと西洋系にんじんの2種に分けられ、東洋系はアフガニスタンから13~14世紀に中国(元)に伝播しました。一方、西洋系はアフガニスタンの原種とトルコを中心にした地域に存在した亜種(carota)とが交雑した後、栽培種に発展し12~13世紀にヨーロッパに伝播、特にオランダで積極的に品種改良され、ヨーロッパから日本に伝わりました。
西洋種は東洋種に比べて栽培期間が短く、農作業が容易なた
め、現在はほとんどが西洋種になっています。18~19世紀にオランダから長崎に伝来し、ツンベルグの日本紀行(1775~1776)には、長崎市郊外で黄色にんじん(Daucus Carotta)が栽培されていたという記載があります。

主要産地の推移

大村地域では、昭和48年から農家の労働力不足解消と共販量の拡大等を目的として、収穫作業を請け負う委託掘取班を部会組織に設置し、現在も活動しています。この生産と収穫を分業して行う取り組みは、諫早地区や島原地域にも波及し産地の維持拡大につながっています。

選果場

平成7年に県央地区(諫早市)に近代的な大型機械選果場を整備し、さらに平成18年には日量70tの処理能力を持つ選果場を整備、平成23年には大型貯蔵施設も完成しました。また、島原地区でも平成8年に大型選果施設が整備され、その後の面積・生産量の拡大に伴い、平成15年には日量40tの処理能力を持つ選果施設に再整備され、現在に至っています。

にんじんの生育(だいこんとの比較)

にんじんとだいこんは、根の部分が土のなかに長く太く成長するのは同じですが、太り方は逆です。にんじんは外側の師部が成長するのに対し、だいこんは内側の木部が成長します。縦に切ってみると、違いを観察できます。にんじんは外側の師部の色が鮮やかで、内側の木部は淡くかたくなっているのでわかりやすいです。
にんじんはなるべく皮はむかないか、薄くむくほうがおいしさを逃すことなく味わうことができます。逆にだいこんは、皮を厚めにむいたほうが、やわらかく、ジューシーな味わいになるというわけです。
にんじんとだいこんは、ひげ根の生え方も違います。だいこんは両脇に並んでいるのに対し、にんじんのひげ根は四方にまんべんなく生えているものです。

五寸にんじん

現在市場に出ているにんじんの大半が、長さ15~20cm前後の品種です。葉が切ってあるものは切り口が小さいものが良質です。首が黒ずんでいるものは避けましょう。

黒田五寸人参

江戸後期、長崎での栽培記録
が残っている“羊角(ヨウカク)
にんじん”は日本の西洋系の最
初とされています。それが長崎
五寸になり、現在日本をほぼ制
覇している“黒田五寸”や一代雑種の“向陽2号”などの五寸にんじんを生んだのです。
この品種は耐暑性が非常に強く、8月に播種し、11月から2月にかけて収穫されます。根色は中心部まで濃紅橙色で、カロチンを非常に多く含んでいます。また、肉質は軟らかく、糖度が高く甘いことから、調理用以外に生食やジュース等としても最適です。

※参考文献
・「長崎県農林産物の伝来と歩み」平成25年3月
 長崎県農林技術開発センター
・「たべもの・食育図鑑」株式会社 群羊社
・「野菜図鑑」独立行政法人農畜産業振興機構HP

※取材協力:JA島原雲仙

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